人と関わるあの魅力を、どう表現すればいいのだろう。
自分で踏み出して仕事をする楽しさ、やりがいの正体は何だろう。
学生時代に取り組む価値のあるものを見つけるには、どうすればいいだろう。
こんなことを考えているときに、参照した本の紹介です。
著者は、お金を「外部化された信用」と表現します。
お金を絶対視しないで仕組みに目を向ける。そして「何を交換しているのか」に着目します。
お金を介さずに本来の意味や価値をそのまま生で伝える有機経済(オーガニック・エコノミー)を考えるとき、僕たちは、人が何かを得る仕組みの本質についても考えさせられる。
今の経済の主軸は、give & take、つまり、与えた価値の対価を直接受け取るというもので、その媒介としてお金が使われている。166,168ページ
これは馴染みのある感覚です。
働いて、お金という報酬を得る。
お金を使うときは(大事なお金ですから!)、自分が損をしないように、あわよくば少しでも得するようにという意識が働きます。
この仕組みだと、価値を見極めてから与えよう(お金を使おう)とする。どうしても慎重になります。損をしたくないので。よく分かります。
ここで何か問題があるとしたら、自ら受け取れるものを制約してしまうことです。
著者は、価値(バリュー)と信用(クレジット)をキーワードに、自分から先に価値を提供する可能性を解説します。
しかし、文脈を残した価値交換経済である有機経済が進むにつれて、誰かに与えた価値が、別の角度から返ってくる、give & givenという仕組みが増えるのではないだろうか。
それは、自分が価値を提供した相手本人から直接価値(貨幣)を得るのではなく、目の前の誰かに与えた価値が信用残高となって蓄積され、その価値が別の誰かから返ってくるという関係である。168ページ
こうやって考えてみると、お金によって交換できるもの、できないものがあると改めて思います。そもそも貨幣のもつ価値が揺らがず、絶対的なものとは信じられない。
話を元に戻します。
対人援助職に限らず、仕事の魅力、やりがいの正体は「交換している中身」を具体的に言葉にしてみると、解きほぐす糸口が見つかるのではないでしょうか。
そして、自分が提供できる価値がどこで発揮しやすいかを試してみる。フィードバックをもらって考えてみる。学生のときに取り組んでほしいことの一つです。言葉にすると陳腐ですが「楽しい」作業です。
「情けは人のためならず」「恩送り」のような、いまはもう真に受ける人がいないのではと心配になることも、やはりここが大事なのだと再確認しました。
僕たちがやるべきは、「いかに得するポジションを見つけ出すか」ではなく、「いかに自らが価値(バリュー)を創造できるか?」を愚直に考えて実行し続けることだ。
お金はいつの世も、目的ではなく、アイデアを具現化する構成要素のひとつにすぎない。208ページ